下奥井の日本料理店「まる十」(富山市千代田町、TEL 076-441-4770)の店主・経沢信弘さんが5月10日、初の著作「古代越中の万葉料理」を桂書房から出版した。
1960(昭和35)年、魚津市生まれの経沢さん。料理人として日本料理店を営む一方、郷土史や古代の食文化に造詣が深い研究者でもある。縄文時代から滋養強壮剤として親しまれていたスッポンを使った「スッポンラーメン」(2,000円)、奈良時代の歌人・大伴家持が「万葉集」内で詠んだ食材を使った「万葉料理コース」(5,000円、要予約)など、古代の越中料理を同店で提供している。
1990年に渡米し、ニューヨークで4年間の料理修業を経たことで、日本の食文化を客観的に見つめる機会を得たという経沢さん。「自分たちの祖先は何を食べていたのか」という研究テーマを独自に掘り下げる中で、日本最古の国民歌集「万葉集」でつづられる食文化にたどり着いた。「万葉集」には天皇から防人(さきもり)、農民などの庶民まで、奈良時代を生きたあらゆる人たちの食生活が豊かにつづられていたという。
その歌の断片から、当時の人たちの食を再現することを試みた同書では、越中国の国守だった大伴家持の歌を取り上げる。歌の中に出てくる「アシツキ」(海藻)、「カタカゴ」(カタクリ)、「シタダミ」(巻き貝)、アユ、タイ、ススタケといった食材を生かし、当時の味付けで再現した料理を、歌の訳とレシピを添えて紹介する。料理を盛る器や皿は、「富山市埋蔵文化財センター」の協力の下、栃谷南遺跡で発掘された貴重品を使用した。
価格は税別1,300円。「まる十」の営業時間は11時~14時、17時~21時。火曜定休。