富山のアートディレクター・宮田裕美詠さんが9月1日、「小川寺の獅子舞モノグラフ」を出版した。「D&DEPARTMENT TOYAMA」(富山市新総曲輪4)のギャラリーでは現在、本の発刊を記念した「小川寺の獅子舞モノグラフ」展が開かれている。
同書では、富山県魚津市小川寺地区で行われている祭りを文章と写真によって記録。どのような人たちがどのような準備や引き継ぎをしてこの行事を続けているのかをひもときながら、祭りの魅力をつづる。
2016(平成28)年に銀座のメゾンエルメスフォーラムで開催されたシャルウ・フレジェさんの個展「YOKAINOSHIMA」で小川寺の獅子舞を知ったという宮田さん。「ちょうど同年10月に開催された秋祭りを見に行き、地域の人たちが淡々と進行する姿に幻想的な印象を持った。祭りの様子を見て、もっと知りたい、記録したいという気持ちが出てきた」と振り返る。
翌年、文化事業の企画・執筆に携わる広瀬徹也さんと祭りを見に行き、その場で獅子舞保存会の人に取材を依頼。その後、カメラマンの室澤敏晴さんと一緒に祭りに通い、今春から本にまとめ始めた。取材では古い文献を調べ、保存会の話を聞きながら、行事の準備段階から立ち合い記録。全撮影カットは約1100カットにも上り、同書では399点を掲載した。
「D&DEPARTMENT TOYAMA」内にあるギャラリーでは「富山のロングライフデザイン」を伝えることをコンセプトにさまざまな企画を行っている。今回の展示に関して、店長の進藤仁美さんは「宮田さんの本をきっかけに私たちも小川寺の獅子舞を知った。神仏混交の古い形を残した祭りだが、宮田さんの視点で祭りに触れると、衣装や舞などの美しさに新鮮な魅力を感じた。富山にもまだ知られていない文化がたくさんあることを知ってもらいたく、展示会の開催に至った」と話す。
展示では本に収録された写真を大きく印刷して掲示。小川寺在住の浜田信義さんが行事を描いた、100号サイズの油絵の展示も行う。進藤さんは「ギャラリーのウインドーには、獅子舞に登場する『ビッチャル』『天狗』『アネマ』などを、富山市在住の小学生・井上音布(おんぬ)君がイラストで描いた。そちらも見てもらえれば」と話す。
本の発行部数は500部。D&DEPARTMENT TOYAMA、「ひらすま書房」(射水市)で販売する。広瀬さんは「祭りが持つ不思議さ、分からなさもまた魅力。記録はしっかり行いつつも、それらを損なわないよう心掛けた。おそらく7回くらい読み直しても、まだ味がすると思う」と話す。
営業時間は11時30分~17時(新型コロナウイルスの感染状況により営業時間変更あり)。11月7日まで。