平井敦士監督の短編映画「フレネルの光」が10月31日から、富山市中心部のミニシアター「ほとり座」(富山市総曲輪)で上映される。
平井さんは富山市水橋地区出身で、東京の映像専門学校卒業後に渡仏。パリの映画学校で学んだ後、フランス人映画監督のダミアン・マニヴェルさんに師事し、映画制作に携わってきた。
「フレネルの光」は、平井さんの実体験と重なるストーリー。夢を追うため日本を離れていた主人公が、父の死をきっかけに初めて帰国する。30歳になろうとしている自身の迷いと亡き父の思い、移りゆく故郷の姿が描かれる。
各地の国際映画祭への出品や、パリ、富山のミニシアターでの上映を目指し、クラウドファンディングで製作資金を募り、目標額の200%を達成。2019年夏に水橋地区でロケが行われた。今年8月には、若手作家の登竜門と呼ばれる第73回ロカルノ国際映画祭(スイス)に短編部門でノミネート。11月15日から開催される第35回ベルフォール国際映画祭(仏)でも、短編部門でノミネートされている。
撮影に参加したという「ほとり座」スタッフの樋口裕重子(ゆちこ)さんは、「ロカルノ国際映画祭ノミネートは、平井さんはもちろん、映画に関わってきた私にとっても大きな喜び」と笑顔を見せる。「ふるさとという、世界中の誰にとっても普遍的なものを映像で表現している。水橋を舞台にしたフランス映画といった感覚。日本の田舎というより、どこでもないどこか、特別な場所として、鑑賞者の心の中に立ち上がってくるのではないか。『水橋のこういう空気が好きなんだ』というのも撮れている。24分という短編ではあるが、言葉では表すことのできない難しい感覚を共有できるはず。不思議な映画体験になると思う」と話す。
マニヴェルさんが監督、平井さんが助監督を務めた最新作「イサドラの子どもたち」(2019年)のほか、「犬を連れた女」(2010年)、「日曜日の朝」(2012年)、「パーク」(2016年)、「若き詩人」(2014年)の短編4本も特集上映する。「イサドラの子どもたち」は、モダンダンスの始祖イサドラ・ダンカンが、1913年に亡くした2人の子にささげたソロダンス「母」を通し、現代の女性4人が踊りと向き合う姿を捉えるドキュメンタリー。コンテンポラリーダンサーの経歴を持つマニヴェルさんならではの繊細な視点、映像の美しさが特徴。
樋口さんは「マニヴェル監督の『パーク』や、マニヴェル監督と五十嵐耕平監督の共作『泳ぎすぎた夜』(2017年)で衝撃を受けた。マニヴェル監督の作品をもっと見たい、上映したいと思って調べていくうちに、助監督をしているのが平井さんと知った。ぜひこの機会にあわせて観ていただきたい」と話す。
「フレネルの光」上映は11月9日まで、マニヴェル監督特集上映は11月13日まで。料金は「フレネルの光」=1,000円(ブックレットつき)。その他の作品の料金、スケジュールの詳細はホームページまで。