富山市の「樂翠亭(らくすいてい)美術館」(富山市奥田新町2)で9月29日より、特別企画展「形の素」が開催されている。
同展では、漆芸家の赤木明登さん、陶芸家の内田鋼一さん、金工家の長谷川竹次郎さんが長年にわたり収集してきた、創作の源とも言える骨董(こっとう)コレクションを展示している。
きっかけは共著「形の素」(美術出版社)で、異なる素材を創作に用いる3人が収集してきた骨董を紹介したところから。同書では、独自のクリエーションを確立し、多分野で活躍する3人の工芸家が、それぞれの審美眼によって手元に集まってきた古物たちとそれにまつわるストーリーを収めている。会場では、同書に収録されなかった愛蔵品も加え約300点の三者三様のコレクションが披露されている。
展示室「蔵」では尾張徳川家の御用鍔(つば)師を務めた家系に生まれ、現在は茶道工芸の3代目を継ぐ一望斎春洸としても茶道具を制作している長谷川竹次郎さんによる「昆虫(いきもの)の世界」も併せて展示。普段は伝統を引き継ぐ茶道具や生活道具を手掛ける長谷川さんが、仕事とは別に子どもへの贈り物として制作してきた昆虫(いきもの)をモチーフにした造形作品が並ぶ。
同館の吉田理恵さんは「作家に吸収されて出ていくイメージの素に注目した展示も面白いのでは。『モノ』の存在をいま一度見ていただき、日常生活の中でモノの形について意識するきっかけになれば」と話す。
10月21日には、関連イベントとしてゲストに「古道具坂田」オーナーの坂田和實さんとグラフィックデザイナーの山口信博さんを迎え、赤木さんと内田さんとともにトークイベントも開催される。申し込みは定員に達したため、すでに締め切り。
開館時間は10時~17時(入館は16時30分まで)。水曜休館。鑑賞料は、一般=1,000、学生=600。12月19日まで。