「国際北陸工芸サミット」の一環で行われている工芸コンペティション「U-50 国際北陸工芸アワード」の審査結果が9月5日に発表され、富山県の蛭谷和紙作家・川原隆邦さんがファイナリスト6人のうちの1人に選出された。
文化庁と北陸3県が連携した同事業は、5カ年計画での開催を予定。2019年度は福井、2020年度は石川県で行われる。初開催となる今年は富山県が開催場となり、「THIS IS 工芸-伝える。創る。」をテーマに、世界の工芸を知り、学び、日本の工芸を世界へ発信するコンセプトで、シンポジウムやワールド工芸100選などのプログラムを予定している。
同サミットのメインイベント「U-50 国際北陸工芸アワード」は、50歳以下の工芸に携わる職人、作家、デザイナーなどを対象とした工芸コンペティション。伝統的な工芸の技法を用いながら、革新的な作品を創作し審査に望む。
今年4月18日から5月31日までの募集期間内に、34カ国・1地域、403件の応募があった。第1次審査で個人・団体併せて66件、2次審査で6人が選出。川原さんのほかに、オランダのエスメ・ホフマンさん、韓国のリ・ジョンミンさん、イギリスのマルチン・ルサックさん、日本からは安達大悟さん、新里明士さんがファイナリストに選ばれた。
6人はこの後、北陸の企業などとともに行う「協同創造プログラム」で作品を制作し、11月22日の最終審査に臨む。翌23日には、高岡の「瑞龍寺」での授賞式において最終審査の結果が発表される。
川原さんは1981年(昭和56年)生まれ。2003年、地元富山へ帰郷し、富山県朝日町に伝わる蛭谷和紙の継承者、米丘寅吉に師事した。米丘亡き後、蛭谷和紙の最後の継承者として、ジャパンエキスポやミラノ万博出展やディズニージャパンクラシックの作品を手掛けるなど、世界的な活躍を見せている。
同アワードで川原さんは、蛭谷和紙の技法を基に、透かしを入れた超軽量の和紙を作成。羽衣のように薄く、ふわっと宙に舞い上がるような作品で審査に臨んだ。
制作に当たり川原さんは「代々受け継ぐ技術と自分自身で生み出した新たな技法を織り交ぜながら制作した。『誰も見たことないもの』を意識した作品は、満足のいく出来だった」と振り返る。「最終審査では、企業の特性を生かし、蛭谷和紙の個性をプラスした新たな価値を創造、提案していければ」と意気込む。