富山県南砺市に本社を構えるアニメスタジオ「P.A.WORKS(ピーエーワークス)」(南砺市立野原東)が、創立15周年を記念してメカアクションアニメ「クロムクロ」を制作。
巨大ロボットの襲撃を受けて知名度を上げた「富山きときと空港」
4月から「TOKYO MX」「チューリップテレビ」など民放5局での放映のほか、動画配信サービス「Netflix」でネット配信中。さらに約190カ国での配信も予定されている。全26話(2クール)。
同作品ではロボット研究が盛んな2016年の富山を舞台に、現代によみがえった侍・青馬剣之介時貞とヒロイン・白羽由希奈が駆る「クロムクロ」が、突如襲来した謎の敵と壮絶な戦いを繰り広げる。
監督を務めるのは、大友克洋さん監修のオムニバス作品「MEMORIES」内の「最臭兵器」を監督した岡村天斎さん。これまで「true tears」「花咲くいろは」「TARI TARI」といった青春群像劇を主に制作してきた同スタジオが、岡村監督とタッグを組んで初の「ロボットもの」を手掛けた。
同作品では、SF要素に戦国時代の情景が織り込まれた世界が広がり、メカアクションと殺陣が融合した「ロボット殺陣」の描写が「斬新で迫力がある」と人気を集めている。由希奈と剣之介の掛け合いには、「日常系アニメ」のヒット作を生んできた同スタジオらしい、ほのぼのとしたコメディー要素もちりばめられている。
黒部ダムや立山連峰、新湊大橋、北陸新幹線、市内電車といった富山の風景が描かれるのも見どころ。富山市中心街が戦闘の舞台となった第2話では、北日本新聞社や富山県庁など実在の建物が登場した。第6話で敵の襲撃を受け壊滅状態となった「富山きときと空港」が、ツイッターのトレンド・ワードにランクインし話題を呼んだことも。
高岡市在住の40代男性は「SF的な設定はあるが、メインプロットはシンプルなので子どもでも楽しく鑑賞できる。東京や大阪といった大都市はもちろん、隣県の金沢には目もくれず、毎回富山だけを襲撃する鬼には頭が下がる思い。P.A.WORKSらしい丁寧な作画で描かれる巨大ロボットの市街戦は圧巻だが、田んぼが踏みつぶされるシーンを見ると若干、心が痛む」と話す。
富山市在住の30代女性は「『富山きときと空港』が襲撃を受けるシーンでは、『きときと』のネオンだけが破壊され思わず笑った。タイトルロゴが富山の地形をモチーフにしているのも面白い。富山県民のツボをくすぐる仕掛けや、ブラックユーモアも魅力」と顔をほころばせる。
富山出身・東京都在住の40代男性は「新聞社や県庁が精巧に描かれていて富山が懐かしくなった。中心街は激闘の舞台となったが、町に人がいない様子も再現されているので結果的に犠牲者が出ないところもいい」と話す。
6月26日からは富山の観光名所をフィーチャーした描き下ろし「クロムクロ観光ポスター」の第1弾「黒部ダム」編が、立山黒部アルペンルートの各主要駅や黒部ダム周辺に掲出される。
同スタジオの代表取締役・堀川憲司さんは「宇宙からの敵は何ゆえ富山ばかりを攻めるのかはさておき、全世界190カ国のアニメファンに、クロムクロが守る富山の美しさを知ってもらう機会になれば」と期待を込める。
毎週土曜、深夜25時53分からチューリップテレビで放映中。