映画「福田村事件」の上映が10月21日、富山市のミニシアター「ほとり座」(富山市総曲輪)で始まる。
同作は、オウム真理教の信者を映す「A」(1998)、続編「A2」(2000)、作曲家の佐村河内守さんに迫る「FAKE」(2016)、東京新聞社会部記者の望月衣塑子(いそこ)さんを追った「i -新聞記者ドキュメント-」(2019)などの社会派ドキュメンタリーを手がけてきた森達也監督による初のドラマ作品。関東大震災直後の混乱の中で実際に起きた「福田村事件」を題材にしている。
関東大震災から5日後の1923(大正12)年9月6日、千葉県東葛飾郡福田村(現在の野田市)の村人たちによって、香川・讃岐から上京した薬売りの行商団15人のうち、幼児や妊婦を含む9人が殺された。殺害理由は、彼らが讃岐弁を話すため、言葉が通じずに朝鮮人と疑われたためだった。自警団員8人が逮捕され実刑になったが、大正天皇の死去に関連する恩赦で釈放された。
劇中では、情報が行き交う社会で不安にあおられ、異質と見なしたものを攻撃の対象とする村人たちの集団心理や、攻撃する側とされる側それぞれの個人の視点を描く。朝鮮で日本軍による虐殺を目撃した後、故郷の福田村に帰ってきた主人公の教師を井浦新さん、その妻を田中麗奈さん、讃岐の行商団を率いる人物を永山瑛太さんが演じる。
同作は、関東大震災から100年を迎えた今年9月1日に全国上映が始まった。これまで描かれることが少なかった事件を取り上げ、現代社会にも通じる問題に肉薄しており、インディペンデント系映画では異例の反響を呼んでいるという。富山での上映を記念し、22日には森監督が舞台あいさつを行う(当日席、若干数あり)。
舞台あいさつは14時50分の上映回後=17時15分ごろからを予定。上映は11月10日まで。