食事処(どころ)「河鹿(かじか)」(黒部市)が、黒部峡谷鉄道の始発・宇奈月駅に「釜めし自動販売機」を設置して1カ月がたった。
半世紀にわたって宇奈月温泉で営業を続ける同店は、釜飯やおでんなどのメニューが観光客に人気を集めている。特に釜飯は地元の名物として県内外で知られており、長期保存も利くために自販機の商品として取り入れた。
宇奈月駅に設置された釜飯の自販機は24時間稼働する。コンビニエンスストア以外の店が営業していない朝6時台に始発の電車が発車するため、飲食物を求める乗客に対応している。
3代目の店主・松下幸太郎さんは「新型コロナウイルスの影響により売り上げが落ちている状況。しかし、店でじっとしていては売り上げが下がる一方なので、自ら積極的に動こうと思った。これまでにも『大阪屋ショップ 宇奈月店』をはじめ、釜飯や総菜の出張販売を行っている。新しい施策として人との接触を避けられる自販機を提案した。今だからこそできたチャレンジだったと思う」と話す。
乗車前にお客さんたちに釜飯を提供することで昼食時の混雑を避けられ、 待ち時間なく外でも気軽に食べてもらえるようになったという。「降車後にもお土産として買っていただいている」と松下さんは手応えを感じている。
店では2種類のみの提供だが、自販機では「峡谷鉄道限定 富山湾釜飯」「紅ズワイガニの釜飯」「ホタルイカの釜飯」(以上1,450円)、「山菜の釜飯」(1,150円)、「名水ポークとみょうがの釜飯」(1,250円)など多彩な13種類を用意する。山菜や海産物は季節によって異なるので、ラインアップは定期的に入れ替えていく予定。
自販機設置と同時に総菜店「ちょっこし屋」もオープン。松下さんは「自販機を導入するには商品を製造するための施設が必要だった。宇奈月を盛り上げたいという思いもあったので、2年間使われていなかった飲食店を利用して新しく店を出すことにした」と話す。
同店では、季節に合わせた量り売りの総菜をはじめ、弁当、揚げ物、おにぎりなどを販売。コロナ収束後にも観光客が温泉街で食べ歩きできるよう、テークアウトメニューを数多くそろえる。
松下さんは「宇奈月温泉はトロッコ、スキー場など楽しめるスポットはたくさんある。自然や温泉に恵まれており、日帰りでも楽しむことができる。今は県民割引キャンペーン期間中なので、気軽に宇奈月に足を運んでいただきたい」と呼び掛ける。
「ちょっこし屋」の営業時間は11時~18時。月曜・木曜定休(祝祭日・長期連休中は営業)。