「南砺市立福光美術館」で現在、「アートって何なん-やまなみ工房からの返信-」が開催されている。
南砺市ゆかりの版画家・棟方志功と日本画家・石崎光瑤の作品の常設展示をはじめ、地域ゆかりの作家作品をコレクションする同館。これまでも独自の視点でさまざまな企画を行ってきた。
同展は、同館の学芸員・土居彩子さんが企画した。「新聞記事でやまなみ工房を見掛け、施設長の言葉や施設の人に対する姿に感銘を受けた。記事の小さな写真の中の作品から放たれる光に興味が湧き、直接工房を訪れ、展示会をお願いした」と振り返る。
1986(昭和61)年に開設した「やまなみ工房」(滋賀県)は現在90人の利用者がおり、それぞれ知的、精神的な障がいのある人がほとんど。誰にもとがめられず、自分自身の世界を築き表現する場となる工房で、利用者たちは毎日描き、作り続けている。
展示はイラストやドローイングといった絵画をはじめ、粘土を使った造形物、刺しゅう、日々の中にある物、など利用者38人の作品111点を空間全体に配置。やまなみ工房施設長・山下完和さんの言葉を交えながら紹介していく。
土居さんは「専門に美術を学んだことのない人たちが、美術を学んだことのないスタッフたちに囲まれ、世界に通用する作品を次々と生み出しているという点をとても不思議に思っていた。何がアートを生み出しているのか?アートが生み出されるには何が必要なのか?アートって何だろう?という疑問の答えを追ううちに、やまなみ工房は作品を作ることを目的にしているのではなく、一人の人がいかに誰にもゆがめられない自分の世界をつくることができるのかを目的にしていることが見えてきた」と話す。「展覧会に足を運んでいただいた方々に、ありのままの自分、自分の好きな世界を堂々と好きといえる自分に出会ってほしいと願う」とも。
関連企画として期間中、富山県および近県で活躍する障がいのある作家たちの作品「beのコト人とこの美」を同館2階で展示。4月18日には城端伝統芸能会館「じょうはな座」で、やまなみ工房のドキュメンタリー映画「地蔵とリビドー」の上映会を行う。
開催時間は9時~17時。火曜定休(5月4日は開館、6日休館)。料金は、一般=700円、高校生・大学生=210円、中学生以下無料。5月9日まで。