ダイナミックマッププラットフォーム株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長CEO:吉村 修一、以下「当社」)は、測量・調査・土木設計を行う日本海測量設計株式会社(本社:富山県高岡市、代表取締役:麻生 正則、以下「日本海測量設計」)を子会社化したことをお知らせいたします。また、同時に当社の測量事業を統括する「ダイナミックマッププラットフォームコンサルタンツ株式会社」を立ち上げ、今後は日本のデジタルインフラ整備を担う測量ネットワークをロールアップ型M&Aを通じて確立していきます。

■本件の背景
- 当社グループのビジョン実現に向け、多様化するエリアのデータ生成とデジタルインフラの整備には測量技術の拡充と迅速かつ柔軟な測量体制が必要
当社は2016年の創業時から公道を中心に高精度3次元データを整備してまいりましたが、最近では空港・港湾・物流センター・企業内施設など、データを生成するエリアの多様化が進んでいます。また、当社のビジョンである「Modeling the Earth」の実現に向けたデジタルインフラ整備においては、より幅広いエリアでのデータ化が必要であり、その技術的ベースとなる測量は当社にとって重要な領域です。
こうした事業をさらに拡大していくには、ドローン・ハンディスキャナなど、公道とは異なる計測手段の確保や最新技術の採用、データ生成において各施設の運営を妨げない迅速かつ柔軟な測量体制が必要です。そのためには、既存パートナーに加え、自社でも十分な測量能力を保有することが求められます。
- 測量業界の3つの課題によりインフラ老朽化・自然災害への対応が困難に。デジタルインフラ整備が遅延する可能性も
我が国の社会資本ストックは高度経済成長期に集中的に整備され今後急速に老朽化することが懸念されており※1、昨今、自然災害も頻発する中ではインフラの老朽化は日本の大きな社会課題となっています。
測量士・測量士補は、土木・建築工事などを行う際に土地の正確な位置・形状・面積などを測量するための国家資格です。道路・橋梁・河川といったインフラ工事の前段階において土地の状況を正確に把握するための測量を実施し、地図や設計図を作成することで、工事を支える基盤を作ります。また、地震や洪水など自然災害の発生時には、真っ先に現場に向かい土地の変動や形状変化を測量し、復旧計画の基盤となる情報を収集します。こうした測量士・測量士補の業務は工事全体のスピード・効率性の向上に重要な役割を果たすものであり、インフラ老朽化・自然災害への対応に大きく貢献しています。
一方で、測量業界は以下の3つの課題を抱えています。
1.業界再編の課題※2
測量業界の市場規模(契約金額)は公共事業においては20年間で約10%増加し、2024年度で約734億円、民間事業においては2008年度に急落がありつつも徐々に回復し2024年度で約173億円と、ともに順調に推移しています。一方で、測量業者は2003年度をピークに21年連続で減少しており、2023年度末の測量業登録業者のうち95%が資本金1億円未満の中小企業です。
測量業界では市場全体は安定しているものの、地場で安定的な受注を獲得できることもあり小規模事業者の再編が進みにくく、また後継者不足の問題から事業が承継されないまま廃業に至ってしまう傾向にあります。

2.測量士育成の課題※3
測量士は直近10年間で約2割減少しており、年齢層は50歳以上が6割超を占め、30~40歳台の減少が顕著となっています。一方、測量士補は微減傾向であるものの、全体として測量士に比べ安定傾向にあり、年齢層も50代以上は4割程度となっています。また、測量士・測量士補ともに従業員数の少ない小規模企業であるほど50代以上の高齢資格者への依存度が高い傾向にあり、中小企業を中心に高齢化が進行しています。


この原因の1つとして考えられるのが、測量業界以外への人材流出です。測量士補は文部科学大臣が認定する大学や専門学校を卒業することで資格を取得することができますが、測量士補が測量士になるには測量業界で規定の実務経験を積む必要があります。しかし大卒・専門学校卒の測量士補取得者は待遇面や将来性の不安などの理由から測量以外の周辺業界へ流出しやすい傾向にあり、また、測量会社に就職しても大手企業に集中しやすく、中小企業への入社は限定的です。さらに就職後も同様の理由で周辺業界への流出は続き、残された資格保有者へ業務負荷が集中することから転職がさらに加速するという悪循環に陥っています。
3.技術革新の課題※4
測量業界では3次元測量、ドローン測量など様々な技術革新が進んでおりますが、1.に記載の通り測量会社のほとんどが中小企業であるため大規模かつ高頻度の設備投資が難しい企業も多く、最新技術の導入が進みにくい傾向にあります。また、若手人材の減少により最新技術のキャッチアップが難しいこと、測量業者の減少により他社と切磋琢磨できなくなっていることなども遅れの原因となっています。
これら1.~3.の課題が今後さらに進行すると、地方インフラ整備の担い手が減少し、老朽化や災害への対応が困難になると考えられます。また、当社の取り組みも含め政府を中心に進められているデジタルインフラの整備に関しても、遅延につながる可能性があります。
■今後の展望
上記の背景を受け、当社は測量業界(測量・設計・建設コンサルタントなど)においてロールアップ型のM&Aを実施し、日本のデジタルインフラ整備・測量業界の維持に貢献する測量ネットワークを中期的に確立します。今般の日本海測量設計の子会社化はこの取り組みの第1号案件です。今後は新たに立ち上げた統括会社・ダイナミックマッププラットフォームコンサルタンツ株式会社のもと、複数地域の測量・設計・建設コンサルタント会社のグループインを推進し、将来的には比較的規模の大きい企業を中核にグループ経営基盤を形成します。地域社会に根差した各社の特長を継承しつつ、人材/技術/機材の共有化や最新技術への投資などグループならではのメリットも追求し、デジタルインフラ整備およびさらなるビジネス拡大を推進してまいります。

当社測量ネットワークイメージ
※1 出典: 国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/maintenance/02research/02_01.html)
※2 「建設関連業等の動態調査」(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/statistics/details/t-other-2_tk_000244.html)
「建設関連業 登録業者数調査」(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001910419.pdf)
をもとに当社作成
※3 令和5年度測量業における測量士・測量士補に関する実態調査報告書(国土交通省)(https://www.gsi.go.jp/common/000263596.pdf)をもとに当社作成
※4 令和5年度測量業における測量士・測量士補に関する実態調査報告書(国土交通省)(https://www.gsi.go.jp/common/000263596.pdf)をもとに当社作成
■各社コメント

(写真右)ダイナミックマッププラットフォーム 代表取締役社長CEO 吉村 修一
このたび、日本海測量設計株式会社を当社グループに迎えることができましたことを、心より嬉しく思っております。当社グループは「Modeling the Earth」というビジョンのもと、自動車業界をはじめとする多様な産業分野に対し測量データの提供を通じて社会課題の解決に取り組んでまいりました。現在、我が国では地球温暖化に起因する異常気象による自然災害の頻発、ならびに高度経済成長期に整備された社会インフラの老朽化が深刻な社会的課題となっております。これらの課題に対応するためのインフラ修繕や災害復旧の現場において最初に求められるのが測量業務であり、その重要な役割を担っているのが地域に根差した中小・零細の測量会社と、そこで働く測量士・測量士補の皆様です。当社はこうした測量会社のグループ化・ネットワーク化を推進することで、安定的かつ持続可能なデジタルインフラの提供に貢献し、社会全体のレジリエンス向上に寄与してまいります。
(写真左)日本海測量設計 代表取締役 麻生 正則
当社は1983年の創業以来、富山県を中心に地域密着型で40年以上にわたり測量業に従事してまいりました。直近では2024年の能登半島地震の復旧対応にも携わり、測量業界の社会的必要性を改めて強く実感するとともに、業界が抱える課題にも日々直面しています。このたびのM&Aのお話をいただいた際、当社としても測量業界の課題解決に向けた一歩となる可能性を感じました。また、ダイナミックマッププラットフォームが推進するデジタルインフラ整備は、これからの社会を支える重要な取り組みであり、当社の技術や知見がその中で活かせると確信しております。今後、ダイナミックマッププラットフォームを中心とした測量ネットワークが、より良い社会の実現に貢献できることを願っております。
当社は今後もM&Aなどを活用し、ビジョンである「Modeling the Earth」の実現に向けて邁進してまいります。
<日本海測量設計株式会社について>
設立: 1983年11月
所在地: 富山県高岡市京田409番地
代表者: 代表取締役 麻生 正則
事業内容: 測量全般、土木建築工事の調査設計・企画・立案・施工監理に関する業務
URL: https://nihonkai-sd.co.jp/
<ダイナミックマッププラットフォームコンサルタンツ株式会社について>
設立: 2025年10月1日
所在地: 東京都渋谷区渋谷2-12-4 ネクストサイト渋谷ビル12階
代表者: 代表取締役社長 猪俣 光俊
株主: ダイナミックマッププラットフォーム株式会社 100%
<ダイナミックマッププラットフォーム株式会社について>
当社は日本政府によるバックアップのもと、国内自動車メーカー10社等の出資により設立されました。日本をヘッドクオーターに、北米・欧州・中東・韓国に拠点を持ち、26ヶ国で事業を展開しています。
現実の世界をデジタル空間に複製する高精度3次元データのプラットフォーマーとして、様々な産業分野におけるイノベーションを支えています。
設立: 2016年6月
本社: 東京都渋谷区
代表者: 吉村 修一
事業内容: 自動運転・ADASをはじめ多様な産業を対象とした高精度3次元データの提供
URL: https://www.dynamic-maps.co.jp/