今年5月31日、北陸新幹線開通に伴う駅前再開発によって半世紀以上にわたる歴史に幕を閉じた富山・駅前シネマ食堂街。昭和のムードが色濃く漂うレトロスポットとして人気だった同地区には、すし店、居酒屋、中華料理店が並び、県内外からコアな客を集めていたが、その一部店舗が続々と新天地で営業を開始している。
「この店の一番の魅力はハル」と常連客に言わしめる店主・牧野晴夫さん
すし店「寿(す)し晴」(富山市内幸町9)は8月末、旧・駅前シネマ食堂街からほど近いオレンジビルに移転。以前はカウンターのみだったが、新店舗では小上がり席を追加。「上にぎり」(2,500円)、「並にぎり」(1,500円)などの盛り合わせメニューを提供。客の要望に応え、高級ウイスキーのボトルキープにも対応する。
19時のオープン早々から翌1時まで常連客がひしめき合い、店主の牧野晴夫さんとの丁々発止の掛け合いが繰り広げられる光景は以前と変わらない。旧店舗から通い詰める40代男性は、「相変わらず予約が取りづらい人気店。店は人が作るものであって、場所が変わっても魅力は不変。晴夫さんが目利きした新鮮なネタと、晴夫さんの人柄が客を引き寄せる」と語る。
18時から翌5時までの深夜営業を行う老舗中華料理店「粋宏閣」(桜町1)は7月末、新店舗で営業を再開。席数は1階・2階合わせて約80席。深夜0時を過ぎても店は活気にあふれ、名物「ムースーロー(豚とキクラゲの炒め物)」(950円)、「ブラックラーメン」(750円)、「ギョーザ」(500円)、「ワンタンメン」(800円)などを提供。1リットルの生ビールが注がれる「男気ジョッキ」(880円)も人気だ。女子会の3次会で同店を訪れたという30代の会社員は「飲み会の締めにムースーローを食べないと一日が終わらない」と語った。
ほかにも「唄(うた)うおでん屋」として愛される居酒屋「茶文」(桜町2)、商業ビル「CiC」の地下に移転した老舗お好み焼き店「ぼてやん多奈加」(新富町1)など、いずれも駅前近くに移転し、営業している。