入善町の「ふるさと学習会」が昨年11月、昭和30年代の舟見地区の絵図を完成させた。同作品は、富山市で紅茶の店「アナザホリデー」を営む徳光孝司さんが中心となり手掛けた。
同地区で生まれ育った徳光さんが、正月など親戚が集まった際に必ず聞く舟見の昔話を面白いと思ったのが、絵を描くきっかけになった。
同地区は黒部市宇奈月町と入善町の境にある。同地区はもともと参勤交代の通り道でもあり、徳光さんの父親が幼い頃は、「映画館」や「温泉」、「銀行」や「カフェー」などがあるにぎやかな町だったという。徳光さんが子どもの頃はすでに寂れていたため、当時のことをよく知る「ふるさと学習会」の会員に話を聞き、その話を基に絵を描き進めていった。
同会では月に一度、地元の有志が集まり、石碑や水源探しなどを行い舟見や周辺のことを勉強している。徳光さんは2013年から、同会や近所の人たちから情報を集めてきた。絵は仕事が休みの日を利用して描き、3年前より「舟見公民館まつり」で1作品ずつ発表を行ってきた。
作品は部分部分を描きながら、これまで3回にわたって発表。今年の作品を含めた全6枚を全て組み合わせ、全長約6.5メートルの作品を完成させた。
徳光さんは「この絵図は地図とは違う。描き上げて思ったのが、本来はここに何があったという正確さがあれば歴史的な資料になると思うが、私は人の思い出の風景を描きたいし、その方が面白いと感じた。この絵を見て、地元の人たちが会話をするきっかけとなれば」と話す。
絵図には建物のほかに、当時の街を歩く人々の姿も描かれている。「自分が住みたいなという風景はぼんやり頭にあって、最初は店だけ描いていたが、店員さんやお客さん、店に向かう人などがいるのが『街並み』だと思った」と徳光さん。
「舟見では昔、天皇ご一家も見に来られるようなスキー大会があったそう。そんな風景も今後は描いてみたい。いつかこの絵を3Dで再現してくれる人がいてくれればうれしい」とも。