富山県ゆかりの文学を幅広く発信する「高志の国文学館」(富山市舟橋南町、TEL 076-431-5492)で10月29日、企画展「浅野総一郎 九転十起(きゅうてんじっき)の生涯」が始まった。
企画展の入り口にある、浅野総一郎の銅像とポスター。 “S”のようなデザインは、総一郎由来の家紋をモチーフにしている
「富山の巨人」シリーズの第1弾となる同展。浅野総一郎といえば「京浜工業地帯の父」と呼ばれた富山県氷見市出身の実業家だが、その足跡は決して平たんなものではなかった。同展では、その七転八起ならぬ九転十起の生涯に焦点を当て、ポスターや絵はがき、美術品や日記など貴重な関連資料を基にひも解いていく。
主任の菅田智雄さんは「富山は近代日本をつくった偉大な実業家をたくさん輩出しているが、浅野総一郎のようにドラマチックな生涯を送った人はなかなかいない。巨人展の第1弾に最もふさわしいと考えた」と話す。
展示は全6章で構成され、少年時代の「大商人への憧れ 何度失敗してもくじけないたくましさ」で始まる。浅野は元々医者の家の生まれだが、加賀の海運商人・銭屋五兵衛に憧れ15歳のときに地元で商売を始めるも、ことごとく失敗。23歳で再起を図るべく上京し、水売りや竹の皮屋、石炭商などの商売を成功させ、その後はセメント、炭鉱、造船、電力などスケールの大きな事業を次々と展開していった。
「浅野のすごいところは、失敗を繰り返してもそれを糧に何度も立ち上がっていくこと。失敗を重ねても、夢を持ち目標に向かって、勤勉・努力をすれば必ず成功することを体現している。展示している晩年の書には『努力 稼ぐに追い付く貧乏なし』と書かれており、その不撓(ふとう)不屈の精神が感じられる」と菅田さん。
「明治の二大実業家である、渋沢栄一と安田善次郎との関わりも面白い。渋沢とは現在のサッポロビールや磐城炭鉱(現スパリゾートハワイアン)など多くの会社を設立しており、同郷の安田からは東京湾の埋め立て事業などで多額の融資を受けている。2人の日記からは、浅野の努力家で先見の明があるエピソードがたくさん発見されており、そちらも今回の展示の見どころ」とアピールする。
関連イベントとして浅野総一郎の映画三部作の上映会を11月6日、12日、12月10日に行う。23日には、その映画でメガホンをとった市川徹さんのトークイベント「映画監督が語る浅野総一郎」も予定している。
開館時間は9時30分~18時。火曜休館。観覧料は、一般=400円、大学生=300円、高校生以下無料。12月19日まで。