入善町の「下山(にざやま)芸術の森発電所美術館」(入善町下山)で9月18日、国際的に活躍する現代アーティスト・加藤泉さんと中国人アーティストの陳飛(チェン・フェイ)さんによるアート展「この世界に生きている 加藤泉×陳飛」が開催される。
1926(大正15)年に建設されたレンガ造りの水力発電所を再生した、全国でも珍しい「発電所美術館」で行われる同展。会場は3機あった発電機のうち1機がそのままの状態で残り、洞窟のような導水管が壁面にぽっかりと開く独特な空間で、加藤さんの新作の絵画と3メートルを超える彫刻作品約10点、陳さんの縦横比3メートルを超える新作絵画作品と彫刻作品1点を含む約12点を展示する。
1969年(昭和49年)生まれの加藤さんは、武蔵野美術大学造形学部油絵科を卒業。1990年代から、原始をさかのぼるような人の「原型」をモチーフとした油彩絵画作品、木やソフトビニールを素材とした彫刻作品を製作・展示している。植物や大地と一体化したように見え、迫力やユーモア、愛らしさを表現している。
1983年(昭和58年)生まれの陳さんは、一人っ子政策後に生まれ、外国の資本主義と中国の共産主義の間で揺れる「ポスト80年代」の作家。大学で映画を学んだ経験を元に、改革開放後の急激な近代化の中で育ってきた現代社会の葛藤や問題を描く絵画作品を製作・展示している。日本では初の個展開催となる。
開催初日の18日は、加藤さんと陳さんによるオープニングトーク(14時~15時)、オープニングレセプション(15時30分~17時)を予定する。10月は、展示作品と保坂健二朗(東京国立近代美術館主任研究員)とロビン・ベッカム(中英バイリンガル美術雑誌『芸術界・LEAF』編集長)の論考を含む図録も刊行する予定。
入善町文化振興財団の上田智文さんは「原始をさかのぼるように人間の本質に迫る加藤さんの生物学的な『原型』を思わせる作品と、現代社会の葛藤や問題を表現する陳さんの急激に変化する社会を生きる『現代人』を表現した作品の対比を楽しんでいただきたい。今回は人間をテーマとしており、作品を通じて生きることを見つめ直すように見ていただければ」と話す。
開館時間は9時~17時(入館は16時30分まで)。月曜(9月19日、10月10日は開館)と祝日の翌日休館(=9月20日・23日、10月11日、11月4日・24日)。入場料は、一般=600円、高大生=400円、中学生以下無料。12月18日まで。