富山の出版社「桂書房」(富山市北代)の創業40周年を記念した展示会「大切なのは言葉なんかじゃない、」が現在、滑川の古書店「古本いるふ」(滑川市瀬羽町、TEL 076-456-7620)で開催されている。
1983(昭和58)年、新湊出身の勝山敏一さんが創業した同社は、北陸地方にまつわる書籍を主に発行している。「越中資料集成」「桂新書」「記憶」シリーズなどの歴史・民俗・文化関係の刊行物から、イタイイタイ病をはじめ社会問題に肉薄する記録集・ルポ、コレクション図録「棟方志功 装画本の世界」、実話を基にした絵本「カモシカとしょかん」まで多岐にわたる出版活動を行っている。
過疎化が進み廃村となった富山の74村を探訪した「村の記憶」(1995)、富山の感化院(現・児童自立支援施設)の歩みを追った「感化院の記憶」(2001)などで地方出版文化功労章を受賞。中でも同社を代表する作品が、人間の生死を見つめ続けた納棺師の哲学を綴った青木新門「納棺夫日記」(1993)。日本映画初のアカデミー賞外国語映画賞を受賞した「おくりびと」の原案として知られ、ロングセラーとなっている。
展示会は10月と11月に開催。創業当初の刊行本から最新刊までの約400冊を展示する。図書目録「桂通信」全64号分を閲覧できるようにするほか、勝山さんのインタビュー映像も上映。書籍の販売も行う。
同展を企画した「古本いるふ」店主の天野陽史さんは、新刊書店のみならず古書店においても、桂書房は専門性の高さ、良質な内容から重要な出版社であると考えているという。「桂書房のように、新書からブックレットまで刊行している地方出版社は少ない。桂書房の書籍は過去を振り返る装置としてだけでなく、現代に生きる自分たちが今後どうあるべきかを再考するきっかけを与えてくれる。桂通信の冒頭に収められている勝山さんの随筆には、近刊に関連することから同時代の社会的問題まで率直な思いが記されている。素晴らしい文章なので、ぜひ読んでいただきたい。展示を機に桂書房の活動をより広く知っていただければ」と話す。
営業時間は12時~18時。10月14日・17日は休み。第1回は10月22日まで、第2回は11月6日~12日。入場無料。