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富山県立近代美術館で詩人・辻井喬と美術評論家・瀧口修造「20世紀美術」展

「セゾン文化」を象徴するポスターが並ぶ

「セゾン文化」を象徴するポスターが並ぶ

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 富山県立近代美術館(西中野町1、TEL 076-421-7111)で12月1日より、「時代の共鳴者 辻井喬・瀧口修造と20世紀美術」が開催されている。

ミロの作品に見入る男性客

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 実業家・堤清二として知られる詩人・辻井喬と、芸術運動「シュールレアリスム(超現実主義)」をいち早く日本に紹介した富山出身の美術評論家・詩人の瀧口修造。同展では、辻井が設立したセゾン現代美術館の収蔵作品を中心に、2人の詩人がまなざしを向け続けた20世紀の現代美術や自筆原稿など142点を5部構成で紹介する。

 父・康次郎から受け継いだ西武百貨店を母体に、セゾングループを創業した堤清二は、1970年代から80年代にかけてパルコや無印良品店、ロフト、ファミリーマートなどの小売業を展開。美術、演劇、音楽関連の施設を設立するといった文化的事業にも力を注ぎ、消費と文化を融合させた「セゾン文化」で一時代を築いた。実業家として名をはせる一方で、「辻井喬」のペンネームで約120冊の詩集・小説を残した。

 瀧口修造は、1931(昭和6)年にシュールレアリスムの提唱者アンドレ・ブルトンの「超現実主義と絵画」を翻訳。サルバドール・ダリ、ジョアン・ミロらと交流を深めると同時に、自らも制作活動に打ち込み日本での前衛芸術の普及に努めた。
1927(昭和2)年生まれの辻井と、1903(明治36)年生まれの瀧口は20歳以上も年が離れているものの、共に同時代の美術作家を支援し、その作品を日本に紹介した人物として共通項が多い。

 第1章「はじまりのパウル・クレー」では、スイス出身の画家パウル・クレーに焦点を当て、「北極の露」「セイレーンの卵」などの作品を展示する。辻井と瀧口の最初の接点は、1961(昭和36)年に西武百貨店で行われたクレーの回顧展だった。1963(昭和38)年に刊行された同回顧展の画集で、瀧口は熱のこもったテキストを寄せている。このクレー展をきっかけに、辻井は実業家・堤清二として西武美術館の開館を目指すようになる。

 第2章「二人の詩人、二つの美術館」では、美術館を「時代精神の根拠地」とし、西武美術館の設立に意欲を燃やした辻井と、「芸術表現の発生の場」と捉え、富山県立近代美術館の設立に貢献した瀧口の活動を紹介。辻井と瀧口の生原稿や、セゾングループの劇場ポスター、糸井重里さんのキャッチコピー「おいしい生活」が話題を呼んだ西武百貨店の広告ポスターなどを展示する。

 第3章から第5章では、辻井と瀧口が共鳴した20世紀の巨匠と、同時代の作家に肉薄。瀧口と親交が深かったスペインの画家ジョアン・ミロや、「ネオ・ダダ」を代表するアメリカの画家ジャスパー・ジョーンズ、荒川修作などの作品を展示する。とりわけ目を引くジャスパー・ジョーンズの「標的」は、特別にセゾン現代美術館からの持ち出しが許されたという貴重な作品だ。

 今回の企画展に際し、学芸員の稲塚さんは「辻井喬と瀧口修造という、2人の詩人の詩や文学を通して美術の扉を、または美術を通して詩や文学の扉を開いてほしい。この企画展が相互にとって風通しのいい窓となってくれれば」と話す。

 開館時間は9時30分~17時。観覧料は、一般=900円、大学生=650円、高校生以下無料。月曜休館。来年1月17日まで。

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