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富山・朝日町のそば店「くちいわ」が閉店 地元産そばの生産目指す

店主の口岩倫彦さんと妻の麻美さん

店主の口岩倫彦さんと妻の麻美さん

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 富山県朝日町のそば店「手打ちそば くちいわ」(朝日町道下)が11月1日、7年にわたる営業を終了した。

全国各地の銘酒が並んだ店内

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 店主の口岩倫彦さんが手掛けた同店は2009年4月27日に創業。「進学で東京へ上京したが、手に職をつけて富山県へUターンすることを考えていたところ『手打ちそば』との出合いで考えは一変。水とそば粉、小麦粉(つなぎ)とシンプルな構成だが、打ち手の考えによって、同じ材料を使いながらも違うものができる『手打ちそば』の未知なる世界に引き込まれた」と当時を振り返り、「そばは小さいお子さんから年配の方まで老若男女を問わず幅広く受け入れられる日本の伝統文化。富山県はラーメンとうどんの文化だが、そばを食べる文化が根付いていないため開拓しがいがあった」と創業の経緯を話す。

 モダンな店構えと店内のカウンターには日本全国の銘酒がそろい、そばとお酒が楽しめる店として人気を博した同店。全国からも客が訪れ、週末には1時間待ちの行列ができたこともあった。

 毎朝8時に店へ入りオープンの11時に間に合うよう出汁(だし)を取り、そばを打つ。「途中でそばが売り切れても良いと思ってやってきた」と口岩さん。手打ちする人間は一人だから無理をしないことを心掛けたという。

 「東京で勉強していたことから、量や価格も当初考えていたものと違った。朝日町は山と海の距離感が近く、釣ったばかりの魚、天然の山菜やキノコ、畑でたくさんの日を浴びた野菜など、常に新鮮な食材が日常にあふれ、朝から食卓に並ぶ。外食文化が育ちづらく、朝日町は富山県でも最も商売が難しく苦労した」と振り返る。

 「そばは『原料』と『水』が大事。朝日町は水に恵まれている。将来的に『朝日町産そば』を作り、地元にそばの文化を作っていきたい」という展望を持ち、「今の生活スタイルやシステムでは日々の日常に追われ、ビジョンを展開するのが難しい。しかし、次のビジョンが見えてきた」とも。

 口岩さんは「この7年半、そばを、そば屋を愛し、感謝している。そばを通じて、朝日町に足を運ぶ、朝日町を好きになってくれる人が増えることをしていきたい」と話す。

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